Story

渺茫たる大海と空に抱かれた島、タマルサリア。
古くから交易で栄えてきた彼の地は、人々から『水の都』と呼ばれ親しまれていた。
そこに暮らす人間を始めとする多くの種族は時に助けあい、時に争いあいながら幾星霜かを過ごしていった。

海にたゆたう島々を包むゆるやかな時は、遠く果てからやってきた軍勢によって急な終わりを告げることとなる。

遥か大陸を手中におさめた帝国の来寇とその戦ぶりは、どこか牧歌的だったタマルサリアの人々を震え上がらせるのには十分だった。
いくつもの国が倒され、街が焼かれ、家々が轢きつぶされてしまった。それでもタマルサリア勢は必死に戦い、帝国軍は来寇から一ヶ月と経たずに退いていった。
後に『第一次帝国来寇』と名づけられることになるこの戦は、人々の心に拭い去りがたい影を落とすこととなる。

外敵の去ったタマルサリアの地は、しかし剣戟の音が絶えることなく響き渡っていた。

或る人は帝国軍の再来をひたすら恐れ、或る人は己が名をあげるために旗を掲げ、また或る人は無心に精霊の加護を祈った。
そんな最中にちらつきだした帝国の影は、人々の混迷をさらに深める方へと働いた。
戦乱の止む気配はいまだ見えない。
何かに魅入られたように、人々は戦い続ける。