ヴィントイラハーフェン辺境伯

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「ヴィントイラハーフェン辺境伯」とは、帝国極西辺境部の統治を担当する官職名である。現在の辺境伯に任ぜられているアーロイスは猛将として名を馳せてきた男で、当代随一の出頭人でもある。

選ばれて最初に手掛けた仕事は海賊対策である。現在に至るまで最も時間を割いたのもまた、海賊対策である。要はそれだけ被害が深刻だったということだ。

しかし割いた時間と関心の大小が常に比例関係にあるとは限らない。
彼を物理的に支えているのは、辺境の民とそこからあがる運上である。その支えを脅かしているのは海賊ではなく、凶暴化著しい魔物と、何度追い散らしても懲りない賊徒たちであった。
手間と費用の掛かる「海賊討伐」をそれなりにこなしつつ、アーロイスは着実に金と兵と民の歓心を――力を、蓄えていった。

そうして一年と少しが経った頃、ヴィントイラハーフェンに一通の書簡が届けられた。

中にはタマルサリアへの第二次渡海進攻作戦の発令――ただし本軍の出港日時は未定――と、それに先立つ徹底した『障害の排除』を厳命する旨が記されていた。

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