プレファランス
国としてのプレファランスは、王国に臣従する地方豪族のようなものであった。帝国来寇の折に文字通りの猛攻を受け、甚大な被害を被ったというところまでは伝わっている。
しかし帝国軍分遣隊がプレファランス王都まで数日の距離に迫って以降の消息が一切伝わっておらず、滅亡前後の詳細は謎に包まれている。確実にいえることは、最後のプレファランス王は何者かによって殺害されたという一点のみである。
現在、プレファランスの名を用いているのは一人の少女である。少々勝気な小娘といった風貌の彼女は、人知を、そして『同族』の常識をも超えた魔力を秘める吸血鬼である。
プレファランス滅亡と前後して姿を現した彼女は、周囲の人里を片っ端から破壊していった。目につく生き物という生き物を殺し、建物という建物を打ち砕き、雪原に死と災難を撒き散らしていった。北方のあらゆる里という里が廃墟と化すのも、もはや時間の問題なのかもしれない。